About

医局概要

GREETING

ごあいさつ

富山大学 医学部
放射線診断・治療学講座

教授

野口 京 NOGUCHI Kyo

Profile

1991年、富山医科薬科大学(現・富山大学)放射線医学教室(現放・射線診断・治療学講座)に入局。1993年から3年間、秋田脳血管研究センターへ赴任し、神経放射線画像診断を学び、脳卒中の画像診断に関する臨床研究に携わる。1996年、富山医科薬科大学(現富山大学)にてCT・MRI診断業務に従事。2002年、ペンシルバニア大学病院神経放射線診断部門に留学。帰国後、富山医科薬科大学へ復帰。放射線診断専門医としてMRI検査の読影やMRI診断に関する臨床研究を施行。2013年9月16日に、富山大学大学院医学薬学研究部(医学)放射線診断・治療学講座の第3代教授に就任。

富山大学医学部 放射線診断・治療学講座は、画像診断、核医学診療、血管内治療、放射線治療と大きく4部門で成り立っています。
診療放射線技師と共に高度医療機器の能力を最大限引き出すこと、画像検査結果を画像専門医の目で正確に評価し、他科の医師に的確な診断および最適な治療法をアドバイスすることで医療の質と安全に大きく寄与することができます。さらに、IVR(画像下治療)は救命に関わる非常に重要な技術であり、他科から最も評価されている部門の一つです。放射線診断・治療科は診断と治療を幅広くカバーしていることから、入局後に自分のやりたい仕事を必ず見つけることができる診療科です。
臨床研究においては、日常臨床の治療に直結する画像診断法の開発を目指しています。全国でも治療施設が限られている頭蓋内硬膜動静脈瘻のMRI診断は20年以上の研究実績を誇り、当教室から、AJR、AJNR (2編、1編はEditor’s Choice)およびNeuroradiology (2編)にて、硬膜動静脈瘻のMRI診断に関する論文発表をしており、さらに第103回北米放射線学会(RSNA)でのCertificate of Merit受賞、第56回米国神経放射線学会(ASNR)にて最優秀賞であるSumma Cum Laude受賞をしており、世界でも非常に高い評価を得ています。最近では、Dual-energy CTにて新しい画像解析アルゴリズムである“X-Map”を開発しており、急性期脳梗塞治療における最適な画像診断プロトコールの開発に関する研究を行っています。
臨床放射線診断は「個々の症例から学ぶ」ことが最も重要です。同じように見える症例を詳細に読影して、個々の症例の中にある小さな違いを注意深く拾い上げることで、最適な治療につながる実効性のある診断ができます。
私は研修医時代に出席したあるカンファレンスにて、脳動脈瘤破裂による少量のくも膜下出血(警告出血)がCTでは指摘が困難であり、その後に脳動脈瘤が再破裂して亡くなった症例を知り、CTでは診断が困難な脳動脈瘤破裂の警告出血を、その当時はプロトタイプであった最新のMRI画像を用いて診断する方法を開発することができました。この結果は、Radiology (2編) およびAJNRにて論文発表し、その当時の神経放射線診断学の常識を変えることができ、世界から非常に大きな評価を受けました。このように、「個々の症例から学ぶ」ことで、多くの命を救うことにも繋がっていくのです。
みなさんにも、現状の撮像法の改良や新しい撮像法を開発し、挑戦してゆく楽しさを感じてほしいですし、新人であっても自分のやりたい医療、研究に自由に取り組むことができる環境を提供したいと思っています。

富山大学 医学部
放射線診断・治療学講座

教授(放射線腫瘍学部門)/
富山大学附属病院 総合がんセンター 放射線治療センター長

齋藤 淳一 SAITOH Jun-ichi

Profile

1997年、群馬大学放射線医学教室(現腫瘍放射線学講座)に入局。大学院卒業後、2004年から5年間、関連病院では最も治療症例数の多い埼玉県立がんセンターへ赴任し、年間500人以上の放射線治療を主治医として担当し研鑽を積む。2009年、群馬大学へ復帰。群馬大学医学部附属病院、群馬大学重粒子線医学研究センターのスタッフとして主に肺癌、頭頸部腫瘍、血液腫瘍の放射線治療に関する臨床・研究・教育を担当。2018年4月1日に富山大学大学院医学薬学研究部(医学)放射線診断・治療学講座(放射線腫瘍学部門)の教授に就任。

私が医師になった当時、日本ではまだ放射線治療が普及していない時代であり、全国で放射線治療を専門としている医師は300人ほどしかいませんでした。現在では放射線治療医は3倍以上に増え、放射線治療の認知度も改善はしていますが、超高齢化社会化によりがん患者も増加しており、放射線治療医は全国的にも全然数が足りていません。マンパワーも不足していますが、それゆえに自分の存在価値を最大限に活かすことができますし、一人ひとりが大いに活躍できる社会的ニーズの高い診療部門だといえます。
外科医の成長には“腕”を磨くことが必要ですが、放射線科では“頭”を磨くことで治療技術を向上させることができ、年齢を重ねることによって腕が鈍るということはなく、生涯現役で活躍することができます。医療機器は日進月歩で進化しており、最新の医療機器の登場により従来の治療技術では治すことが難しかった病態でも治すことが可能となることもあり、大きなやりがいも感じることができるはずです。
さらに、医療が細分化されていくなか、放射線治療医は専門性を高めながら、かつ臓器横断的に対応するなどGeneralに活躍できることも魅力でしょう。
富山大学附属病院では2020年6月に「総合がんセンター」が新設され、そのなかのセンター群の一つとして「放射線治療センター」があり、完治を目的とする治療から症状を和らげるための治療まで、幅広く、かつ高精度な放射線治療を提供しています。
また、最新型トモセラピー・ラディザクトの導入により、年間200名以上の患者さんに病変部に放射線を集中して照射できるIMRT(強度変調放射線治療)や定位放射線治療を実施するなど、最新医療機械の性能を存分に発揮しながら、患者さんの病態に合わせた適切な放射線治療を提案できる体制が整っています。
放射線診療部門は少人数ですが、診療放射線技師の方々は優秀であり、チームとしての総合力が非常に高いことが特徴です。さらに少人数だからこそ教育面もきめ細かく丁寧であり、活躍できる道がたくさん用意されていることも魅力でしょう。
能力や個性を活かしながらオンリーワンとしての存在価値を高めていただき、大いに輝いてください。

RESEARCH

研究内容

01

画像診断

CT(コンピューター断層撮影)は、X線を使って断層画像を撮影します。現在は多列検出器型CT装置を使用して、短時間に撮像することができます。当院には、64列、16列のCT撮像装置が各1台あります。通常の断層画像のほか、3次元CTアンジオグラフィ、冠動脈CT アンジオグラフィ、デンタル撮影、体内脂肪量測定等の特殊検査も行っています。1日に約80から100件の検査を行っています。来年には、被爆線量の低減した最新のCT装置が導入される予定です。
MRIは核磁気共鳴現象を画像化したものです。CTと異なり、X線による被爆を受けることなく、断層画像を撮像することができます。当院には3T MRI装置が1台、1.5TMRI装置が2台あります。1日に約30から40件の検査を行っています。脳神経路の走行がわかる拡散テンソルtractographyや 脳代謝情報のわかるMR spectroscopy、造影剤を使わずに脳血流情報のわかるASL(arterial spin labeling)などの特殊検査も可能で、診断、治療に役立っています。

核医学診療

核医学検査では、放射性薬剤を利用した診断を行います。放射性薬剤が臓器や病巣に集積することを利用して、CT検査やMRI検査などの形態画像とは異なる生理学的・生化学的情報を画像化します。
当科には測定装置としてSPECT-CT装置や最新のPET-CT装置があります。核医学装置とX線CT装置を組み合わせることにより、核医学検査で検出された異常が全身のどの部位と一致するかを正確に捉えることができます。
核医学検査で用いる放射性薬剤は人体に対して安全な量であり、被曝線量は他の放射線検査と同等のレベルであるため、被曝による人体への影響は心配ありません。また、放射性薬剤に含まれる物質濃度は非常に微量なので薬剤副作用が極めて少ないという特徴があります。 一方、核医学治療は放射性薬剤が病巣に特異的に集積する性質を利用して病変部に放射線を照射する治療法です。当科では、バセドウ病、甲状腺癌術後の転移巣、骨転移の除痛を対象とした治療を行っています。

02

IVR(インターベンショナル・ラジオロジー)

IVRとは、Interventional Radiology(インターベンショナルラジオロジー)の略で、画像診断の技術を応用して行う治療全般を指す言葉で、カテーテルなどを用いて治療を行います。IVRでは手術のように大きな切開を加えることが少ないことから患者さんへの侵襲性が低くて、外科的治療に匹敵する治療効果が期待できると言われています。 様々な病気に対する多くの手技が開発されており、現在も新たな手技が開発されつつあります。特に近年では、本邦でも球状塞栓物質(ビーズ)などの新たなデバイスが承認され、次々と治療に用いられるようになってきました。このため、IVRは非侵襲的な治療法として、重要な一分野になっています。
放射線診断・治療学講座が担当するIVR関連の手技は、年間約350件です。血管内治療として原発性・転移性肝癌、頭頚部癌、骨軟部腫瘍、子宮癌、卵巣癌、胃静脈瘤などを対象とした血管内塞栓術・抗癌剤動注療法を行っています。また腫瘍・外傷などを原因としたの出血に対しての緊急止血、シャント血管狭窄・閉塞に対する血管形成術などにも対応しています。非血管系治療としては画像ガイド下でのドレナージも行っています。
IVRを担当する放射線診断・治療学講座の担当医師は4名(IVR専門医1名)で、昼間の通常業務の他に夜間や休日の緊急時にも対応できる体制をとっています。また、IVR専門医修練認定施設にも認定されています。
当院では、血管撮影装置でCT様画像(コーンビームCT)が撮像できるIVRシステムが3台導入されています。これにより、抗癌剤動注療法や血管内塞栓術において、より精度が高く、安全な治療が可能となりました。また、この内の1台は、手術室内に設置され、血管造影やIVRを行いながら、外科的手術をすることも可能となっています。

03

放射線治療

当院では年間400名以上の患者さんが放射線治療を受けられています。対象は脳腫瘍、頭頸部腫瘍、悪性リンパ腫、肺がん、食道がん、乳がん、膵臓がん、子宮がん、前立腺がん、大腸がん、皮膚骨軟部腫瘍など多岐にわたります。一回の治療にかかる時間や回数は病気の状態にもよりますが、1回10~15分で、合計10~30回程度のことが多いです。治療の最中には刺激を感じるようなこともほとんどなく、重い副作用が起こることも少ないため、可能であれば外来通院で治療を行っています。また原疾患担当科との協力の下、食道がん、頭頸部がん、肺がんなどでは積極的に化学療法併用での集学的治療を行っています。放射線治療はがんの根治が期待できる治療ですが、病状に応じて対症的治療として転移性脳腫瘍、転移性骨腫瘍、がん性疼痛の緩和を目的とした治療なども行っています。
当院は富山県内で最初に高線量率小線源治療(Ir-192)を施行した施設です。小線源治療は非常に小さな線源を腫瘍の内部に留置することで腫瘍に集中して照射できる治療法です。主に子宮がんの治療に用いられますが、前立腺がん、舌がんなどの組織内照射も施行可能となっています。高精度放射線治療である定位放射線治療および強度変調放射線治療(IMRT)は 2009年から開始しています。定位放射線治療は侵襲性が少なく、短期間(3日~1、2週間)で治療ができる利点があります。小型末梢型肺がんや転移性脳腫瘍が主な対象でしたが、転移性骨腫瘍や小数個の転移性腫瘍にも適用できるようになりました。また、当院では2018年にIMRTの専用器であるトモセラピーの新世代型・ラディザクトを導入しました。IMRTは、放射線を照射する形や線量を変化させながら照射することにより、正常臓器への被ばくを最小限にしつつ腫瘍に集中的に照射することができる治療法です。トモセラピー・ラディザクトでは、患者さんの寝台が移動しながら、小型化された照射器がCTのように体の周囲を360度回転しながら照射するため、照射角度や線量の選択の自由度が大きく連続的に広範囲にも照射できることが特徴です。治療例が最も多いのは前立腺がんですが、頭頸部がんや脳腫瘍、胸腹部や骨盤部の腫瘍、全中枢神経照射や全身照射などにも適応できるようになっています。
放射線治療部門のスタッフは放射線治療専門医3名、診療放射線技師10名(うち兼任で品質管理士2名、医学物理士2名)、看護師3名、受付1名です。2023年に入局者1名が加わり、医師が4名となります。見学や入局希望は随時受け付けています。

現在進行中の研究(他科との共同研究を含む)

治療に直結するような臨床研究が重要であると考えており、他科との共同研究を積極的に推進している。

  • MRIによるくも膜下出血の診断
  • MRIによる頭蓋内硬膜動静脈瘻の診断
  • 読影支援システムの開発
  • 統合失調症のMRIによる評価
  • 小児脳発達のMRIによる評価
  • メニエール病のMRIによる診断
  • MRIによるもやもや病の評価
  • DaTscan SPECTによる脳機能評価
  • 一酸化炭素中毒のMRI所見
  • 腰椎領域のMRI神経画像による評価
  • 肩関節軟骨のT2-map画像による評価
  • MRIによる子宮蠕動運動の評価
今後取り組む予定の研究

将来的に大きく役立つ発展的研究には、基礎医学科あるいは工学部との共同研究が必要であると考えている。

  • MRIによる機能画像に関する研究
  • 新しいMRI画像データ処理法に関する基礎的研究
  • CTによる機能画像に関する研究
  • CADによる頭部CT診断に関する研究